「終活」と聞くと、まだ自分には早いと感じる50代・60代のビジネスパーソンも多いかもしれません。
しかし実際には、終活は人生の終わりを準備するためだけのものではなく、自分の人生を整理し、家族に負担を残さないための前向きな準備とも言えます。
特に近年は、銀行口座や不動産といった従来の資産だけでなく、ネット証券、暗号資産、SNSアカウント、サブスクリプション契約など、本人しか把握していないデジタル資産(デジタル遺産)が増えています。これらは、家族が存在すら知らないケースも多く、今後ますます社会問題化すると考えられています。
また、50代・60代の世代は、自分自身の終活を考えるだけでなく、親世代の終活をサポートする立場でもあります。そのためにも、まず自分がエンディングノートや遺言の基本を理解しておくことが重要です。
本記事では、50代・60代のビジネスパーソンが知っておきたいエンディングノートと遺言の違い、書き方のポイント、そしてデジタル遺産への備えについてわかりやすく解説します。
なぜ50代・60代から終活を考えるべきなのか
終活というと70代以降の話と思われがちですが、実際には50代・60代から準備することに大きな意味があります。
第一の理由は、人生の重要な情報を整理できるタイミングだからです。
仕事、資産、家族関係などが比較的安定しているこの年代は、自分の人生を俯瞰して整理するのに適しています。
第二に、万が一の事態はいつ起こるかわからないという現実があります。
事故や病気によって意思表示ができなくなった場合、家族は大きな判断を迫られることになります。
第三に、デジタル遺産の問題があります。
現代では次のような資産が増えています。
・ネット銀行口座
・証券口座
・暗号資産
・SNS
・サブスクリプション契約
これらの存在を家族が知らない場合、相続手続きが非常に複雑になります。
終活や遺言制度については、以下の公的サイトが参考になります。
法務省
自筆証書遺言書保管制度
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051.html
日本公証人連合会
遺言Q&A
https://www.koshonin.gr.jp/notary/ow02
厚生労働省
人生会議(ACP)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_02783.html
これらのサイトでは、遺言制度や医療・介護の意思表示について信頼できる情報が提供されています。
具体例
ある家庭では、亡くなった後にネット証券口座が見つかり、家族が口座の存在を証明するまで長い時間がかかりました。本人しか情報を知らなかったためです。事前に情報が整理されていれば、家族の負担は大きく減っていたでしょう。
エンディングノートとは何か
エンディングノートとは、自分の人生に関する情報や希望を整理して残すノートです。
法律的な効力はありませんが、家族にとっては非常に重要な情報になります。
一般的には次のような内容を書きます。
・基本情報(家族や連絡先)
・銀行口座や証券口座
・保険
・不動産
・デジタル資産
・医療や介護の希望
・葬儀やお墓の希望
近年、特に重要とされているのがデジタル資産の整理です。
例えば、
・ネット銀行
・証券会社
・SNSアカウント
・サブスクサービス
などは本人しか把握していないことが多く、家族が手続きを進める際の大きな障害になります。
エンディングノートは形式が決まっていないため、自由に書くことができます。また、人生の状況に応じて書き直すこともできます。
自治体がエンディングノートの例を公開しているケースもあり、実際の項目を確認する際の参考になります。
例:横浜市 エンディングノート
https://www.city.yokohama.lg.jp/midori/kusei/koho/fukushihoken-center/My-Life.html
具体例
ある60代の会社員は、銀行口座や証券口座を書き出したことで、自分でも把握していなかった資産の全体像が見えたと言います。エンディングノートは家族のためだけでなく、自分自身の人生整理にも役立つのです。
遺言書との違い
エンディングノートと混同されやすいのが遺言書です。
しかし両者は役割が大きく異なります。
エンディングノートは希望を書き残すものですが、遺言書は法律的効力を持つ正式な文書です。
遺言書では主に次の内容を決めます。
・財産の分け方
・不動産の相続
・相続人への意思
遺言書にはいくつか種類がありますが、代表的なのは次の2つです。
自筆証書遺言
本人が全文を手書きする遺言
公正証書遺言
公証人が作成する遺言
近年は、法務局が自筆証書遺言を保管する制度も始まりました。
これにより、紛失や改ざんのリスクが減り、家庭裁判所の検認手続きが不要になるというメリットがあります。
制度の詳細は法務省のサイトで確認できます。
具体例
ある家庭では、父親が「家は長男に継がせたい」と言っていたものの、正式な遺言がなかったため兄弟間で意見が対立しました。遺言書があれば、家族のトラブルを防げた可能性があります。
エンディングノートを書くときのポイント
エンディングノートを書くときは、完璧を目指さないことが大切です。
まずは整理できるところから書き始めることが重要です。
おすすめの順番は次の通りです。
1 資産の一覧を作る
2 重要な連絡先を書く
3 デジタル資産を整理する
4 医療や介護の希望を書く
5 家族へのメッセージを書く
特にデジタル資産については、次の情報を整理しておくと役立ちます。
・金融機関
・証券会社
・ネットサービス
・サブスク契約
ただし、パスワードをそのまま書くのではなく、保管場所を記録する方法など安全性を考慮することも重要です。
具体例
ある人は、エンディングノートに「重要なID・パスワードは自宅金庫のUSBメモリに保存」と書いています。これだけでも家族が手続きを進める際の大きな助けになります。
まとめ
終活は人生の終わりを準備するものではなく、自分と家族の未来を安心させるための行動です。
特に50代・60代は、人生を整理するのに適したタイミングです。
終活の基本となるのは次の2つです。
・エンディングノート
・遺言書
エンディングノートは人生情報の整理、遺言書は財産分配の意思表示という役割があります。
さらに近年は、デジタル資産の整理も重要なテーマになっています。本人しか把握していない情報が増えているため、早めに整理しておくことが家族の負担軽減につながります。
また、この年代は親世代の終活を考える立場でもあります。
そのためにも、自分自身がエンディングノートや遺言について理解しておくことが大切です。
終活は一度で完成させる必要はありません。
まずはできるところから少しずつ、自分の人生を整理するところから始めてみてはいかがでしょうか。

