有名なアリとキリギリスのイソップ寓話。勤勉なアリは夏の間に冬用の食料を蓄えるためせっせと働いた。一方、気楽なキリギリスは自由に遊んで暮らした。やがて冬が到来し、アリは生き残り、キリギリスは・・・。だが、アリはいつ遊ぶことができたのか?
こんな冒頭から始まる『DIE WITH ZERO:ゼロで死ぬ』(ビル・パーキンス著)を読み返した。自身も改めて考え直さなくてはと感じる。今回はこの本について自分なりの解釈をご紹介します。

概要:DIE WITH ZERO(ゼロで死ぬ)
概要
『DIE WITH ZERO(ゼロで死ぬ)』は、老後になってもお金を残しすぎないことの重要性を説く一冊。著者ビル・パーキンス氏は、多くの人が老後になってから贅沢をすることを諦めてしまい、その結果、お金を使う機会を逃してしまうと指摘。彼は、お金を使って人生を豊かにすることこそが賢い老後計画であると主張。
主要なポイント
- ゼロで死ぬ哲学: 生きている間にお金を使い切り、最後にはゼロに近い状態で死ぬことが理想だという考え方。これにより、老後における生活の質を最大化し、後悔を最小限に抑えることができるとしています。
- タイム・マネジメントの重要性: 人生には限りがあり、時間こそが最も貴重な資産であるという観点から、時間とお金の使い方を賢く管理することの重要性を説いています。
- 実践的なアプローチ: 具体的な事例や計画を通じて、どのようにして「ゼロで死ぬ」哲学を実践するかを読者に示唆しています。例えば、旅行や趣味にお金を使うことで人生を豊かにし、経済的な安定を保ちつつ楽しむ方法を提案しています。
事例
- 旅行と体験: 著者自身の体験や、富裕層がどのようにしてお金を使い切りながらも豊かな人生を送っているかを具体例として挙げています。例えば、老後になっても積極的に旅行を楽しむことで、新たな文化に触れる喜びを得たり、親しい人との貴重な時間を過ごすことができるとしています。
- 遺産の運用: 遺産を後世に残すことにこだわるのではなく、自身の生活を充実させるために使うことの大切さを説いています。遺産を使って自分自身や家族の幸福を追求することが、賢明な選択であると示唆しています。
『ゼロで死ぬ』は、贅沢をして楽しむことと経済的な安定を両立させる方法を提案し、人生を豊かに過ごすための新しい視点を読者に示唆する貴重な一冊と思います。読者は著者の考え方を通じて、人生における賢いお金の使い方や人生の充実させ方について深く考えさせられると感じます。
なぜ日本でも売れているのか?
『DIE WITH ZERO(ゼロで死ぬ)』はアメリカの投資家が書いたものですが、日本でもロングセラーになっています。(私が購入した時は帯には17万部突破でしたが、最近は48万部突破だそうです)
なぜ日本でも売れているのか?日本特有の価値観や社会的背景と、この本のメッセージがうまくマッチしたことが大きな要因なのか?と思います。
1. 日本の「貯める文化」との対比がインパクトを与えた
日本では「倹約」や「貯蓄」が美徳とされ、老後資金をしっかり貯めることが推奨される文化があります。しかし、この本では「お金は貯めるだけでなく、人生を楽しむために使うべきだ」と明確に主張しています。この対照的なメッセージが新鮮で、多くの日本人の関心を引いたと考えられます。
2. 「老後2000万円問題」への不安とリンク
2019年に金融庁が発表した「老後資金2000万円不足問題」は、日本社会に大きな衝撃を与えました。多くの人が老後の資金不足を不安視する中、「貯めるだけでなく、使い方を考えるべき」という本書の考え方は、将来の資産管理について再考するきっかけになった可能性があります。
3. 定年後の「第二の人生」への関心が高まっている
日本では少子高齢化が進み、60代・70代になっても元気な人が多くなっています。定年後も「どう生きるか」を考える人が増えている中、「お金を残しすぎず、自分の人生を最大限楽しむ」という考え方は、特にリタイア後の生活設計を考える世代に響いたと考えられます。
4. コロナ禍で価値観が変わった
コロナ禍を経て、「いつ死ぬかわからない」「健康で動けるうちに楽しむべき」という価値観が広まりました。この本の「お金は人生の充実のために使うべき」というメッセージが、多くの人の考え方と一致したことで、売れ行きが伸びたのではないかと考えられます。
5. 「FIRE(早期リタイア)」の流行と親和性が高い
近年、日本でも「FIRE(Financial Independence, Retire Early)」が注目されています。資産を築いて早期リタイアを目指す人が増える中、「お金を使って経験を最大化するべき」という本書の考え方は、FIREを目指す人々にも参考になる内容でした。
6. SNSでの話題化
本書の内容は「貯めすぎず、使うべき」というシンプルなメッセージで、SNSでも話題になりやすいテーマです。特に、ミニマリストやライフスタイル系のインフルエンサーが取り上げたことで、幅広い層に認知が広がったと考えられます。
結論
『DIE WITH ZERO(ゼロで死ぬ)』が日本で売れている背景には、従来の「貯める」価値観に一石を投じるインパクトがあったことや、老後資金や人生設計に対する不安とリンクしたことが挙げられます。また、FIREブームやコロナ禍による価値観の変化とも相性がよく、幅広い層の関心を集めたことがロングセラーヒットの要因といえるのでは?
ターゲット読者層は?また、どういう人が読むと役に立つのか?
1. 想定されるターゲット読者層
① 40代~60代のビジネスパーソン・シニア層(資産形成中・リタイア準備中)
- 一生懸命働き、資産を築いてきたが「老後にどれくらい使えばよいか」が分からない人。
- 定年後のセカンドライフを考え始める人。
- 貯蓄はあるが、「お金を使うこと」に対して消極的な人。
- 親からの相続を受けたり、自分が遺産をどう残すか悩んでいる人。
→ この層には、「お金を残すことだけが目的ではなく、人生の楽しみ方を考えよう」というメッセージが刺さる。
② FIRE(早期リタイア)を目指す30代~40代の人
- 「Financial Independence, Retire Early(FIRE)」を目指して資産運用をしている人。
- できるだけ早く働かずに生きていくための計画を立てているが、「どう使うか」の視点が弱い人。
- 「貯めること」が目的になりすぎている人。
→ FIRE達成後の「お金の使い方」について、新しい視点を得ることができる。
③ 経済的に余裕のある人(富裕層・資産家)
- 既に一定の資産を築いているが、使い方が分からず、漠然とお金を貯め続けている人。
- 資産をどう分配し、いつ使うか悩んでいる人。
- せっかくの資産を活かさず、楽しむことを後回しにしている人。
→ この層には「健康で動けるうちにお金を使う重要性」が響く。
2. 読むと役に立つ人とその理由
① お金を貯めることに意識が向きすぎている人
- 節約が好きで、無駄遣いをしないようにしているが、「使うこと」に抵抗がある人。
- いざお金を使うとなると「もったいない」と感じてしまう人。
→「お金は経験を買うための手段」であり、「死ぬときに残しても意味がない」という視点を得られる。
② 老後資金の管理を考えている人
- 「老後資金は足りるのか?」という不安を抱え、使い方を決めかねている人。
- 「長生きリスク」を恐れすぎて、お金を使えない人。
→「健康なうちにお金を使うことが幸福度を高める」という考え方を学べる。
③ 定年後に何をすればよいか分からない人
- 仕事一筋で生きてきて、リタイア後に何をすればいいか分からない人。
- 退職金や貯金はあるが、使い道が決まっていない人。
→「お金を使って得られる経験の価値」を知り、人生を楽しむヒントを得られる。
④ これから人生の計画を立てる若い世代
- まだ資産形成中だが、「お金をどう使えばよいか」を知りたい人。
- 「若いうちに経験に投資する」ことの重要性を理解したい人。
→「お金の価値は年齢とともに変わる」ことを知り、早いうちから計画的にお金を使う意識を持てる。
まとめ
『DIE WITH ZERO(ゼロで死ぬ)』は、特に 貯めることに意識が向きすぎている人や、老後の資産管理に悩んでいる人 にとって役立つ本です。富裕層だけでなく、リタイアを考え始めた世代や、FIREを目指す若い世代にも新たな視点を提供します。「お金をどう貯めるか」ではなく「お金をどう使うか」にフォーカスした考え方は、日本の「貯蓄志向」の人にとって、大きな気づきとなると思います。
自分も資産形成ばかりに関心が行き過ぎていて、気づいたら定年退職。これからどう使うか、考えさせられました。
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