【セカンド】60代からのダウンサイジング:モノを減らしてシンプルに暮らす

ライフ

気がつけば、家の中にはたくさんのモノが増えています。

何年も着ていない洋服、いつか読むつもりだった本、昔使っていた仕事道具、子どもが家を出た後も残っている家具や食器。「いつか使うかもしれない」と取っておいたものの、その「いつか」が来ないまま10年、20年経っているものも珍しくありません。

特に50代・60代は、これまでの生活で蓄積したモノが最も多くなりやすい時期です。一方で、定年や再雇用、子どもの独立などによって生活そのものが変わり始める時期でもあります。

だからこそ私は、リタイア前後こそダウンサイジングを始めるベストタイミングだと考えています。

ここでいうダウンサイジングとは、単なる断捨離ではありません。これからの人生に本当に必要なモノを選び直し、暮らしそのものをシンプルにしていくことです。

そして重要なのは、元気なうちに始めることです。

60代なら、まだ自分自身で「残す・売る・譲る・捨てる」を判断し、重い家具を動かしたり、フリマサイトを使ったりすることもできます。これを70代、80代まで先送りすると、体力的にも精神的にも大きな負担になります。

ダウンサイジングとは「捨てること」ではなく、これからの人生に必要なものを選び直す作業なのです。

なぜ60代からダウンサイジングが必要なのか

定年後は収入だけでなく、時間の使い方や生活範囲も変化します。それまで仕事中心だった生活から、自宅で過ごす時間が増え、趣味、旅行、地域活動、学び直しなどに時間を使うようになる人もいるでしょう。

ところが、生活が変わっているのに家の中だけが「現役時代のまま」というケースは少なくありません。

大量のスーツやネクタイ、仕事関係の書籍、何台もあるバッグ、昔のパソコンや周辺機器。現役時代には必要だったものでも、これからの暮らしにはそれほど必要ではないかもしれません。

モノを所有することには、実はコストもかかります。

収納するスペースが必要になり、整理や掃除にも時間がかかります。家電や家具なら修理や処分にも費用が発生する場合があります。つまり「持っているだけだからお金はかからない」とは限らないのです。

また、将来、自宅を売却してマンションや高齢者向け住宅へ移る可能性もあります。そのとき大量の家財を一度に処分しようとすると、本人だけでなく家族にも大きな負担になります。

だから60代のダウンサイジングには、現在の暮らしを快適にすることと、将来の負担を減らすことの二つの意味があります。

たとえば定年後もクローゼットにスーツが20着あるなら、「今後本当に着る5着」を残してみる。これだけでも収納に余裕ができ、毎日の服選びも楽になります。

断捨離は「捨てる」から始めなくていい

断捨離という言葉を聞くと、「思い切って捨てなければ」と考えてしまいがちです。

しかし、私は最初から捨てる必要はないと思っています。

モノを整理するときは、

①使う
②売る
③譲る
④処分する

という順番で考えると取り組みやすくなります。

ここで意外に重要なのが「売る」です。

自分にとって不要になったものでも、他の人にとって価値がないとは限りません。

古い食器、昭和時代の雑貨、古本、カメラ、時計、趣味の道具、置物、海外旅行のお土産など、自分では「こんなものは売れないだろう」と思っていたものに買い手がつくことがあります。

環境省も循環型社会に向けて、Reduce(ごみを減らす)、Reuse(繰り返し使う)、Recycle(資源として再利用する)という3Rを推進しています。まだ使えるものを次の人に使ってもらうことは、単なる片づけではなく資源を有効に使う行動でもあります。

「売れなければ捨てる」という一段階を加えるだけでも、モノを手放す心理的なハードルはかなり下がります。

たとえば実家から出てきた古い花瓶。「古いし、誰も使わないだろう」と捨てる前に一度調べてみると、作家物や特定の産地の焼き物で、中古市場では需要があるかもしれません。

不要なものは国内だけでなく海外でも売れる

不用品を売却する最も身近な方法は、リサイクルショップやフリマアプリ、ネットオークションです。

衣類、家電、日用品なら国内市場だけでも十分買い手を探せます。ブランド名、メーカー名、型番、作者名などが分かるものは、まずインターネットで同じ商品がいくらくらいで取引されているか確認してみましょう。

さらに面白いのが海外市場です。

日本では珍しくないものでも、海外では「Japanese Vintage」「Japanese Folk Art」「Showa Retro」などとして評価されることがあります。

古いこけし、陶磁器、漆器、版画、古地図、古書、昭和レトロの雑貨などは、日本国内と海外で評価が異なる場合があります。

つまり、

「自分には不要」=「価値がない」

ではありません。

ただし、海外販売では送料、梱包、関税、輸入規制、破損リスクなどを理解する必要があります。特に国際郵便には航空危険物など送れない品物があり、国によって禁制品も異なるため、発送前の確認が必要です。日本郵便も国際郵便で送れないものや国・地域別の条件を公開しています。

最初から海外販売に挑戦する必要はありません。まず国内のフリマアプリで数点売ってみて、「売る」という経験をしてみるだけでも十分です。

たとえば、長年本棚に置いたままの写真集が国内では数百円だったとしても、日本文化を扱った本なら海外のコレクターが興味を持つ可能性があります。捨てる前に一度市場を調べる習慣をつけることが大切です。

売却するときに知っておきたいお金とトラブルの話

不用品を売ると多少なりとも収入になります。そこで気になるのが税金です。

国税庁によれば、古着や家財など、生活に通常必要な「生活用動産」を売却したことによる所得は原則として非課税です。一方、貴金属、宝石、書画、骨董などで1個または1組の価額が30万円を超えるものなどは、この扱いから外れる場合があります。高額品を売却するときは確認しておいたほうが安心です。

また、ネット取引では相手の顔が見えません。

写真をできるだけ正確に掲載する、傷や汚れを隠さない、商品の状態を文章で説明する、取引はプラットフォームのルールに従う、といった基本を守ることが重要です。消費者庁・国民生活センターもフリマサービスを利用した取引について注意喚起を行っています。

「少しでも高く売ろう」と考えすぎる必要もありません。

60代の断捨離の目的は、不用品販売で利益を最大化することではなく、不要なモノを減らしながら、必要としている人につなぐことだからです。

たとえば1,000円で売れる食器を「3,000円になるまで待とう」と半年保管するより、1,000円で手放して収納スペースが空くほうが、ダウンサイジングという目的には合っているかもしれません。

モノを減らした後に重要なのは「増やさない仕組み」

せっかく断捨離しても、その後また買い物を続ければ数年後には元に戻ってしまいます。

そこでおすすめしたいのが、会計や在庫管理でも使われる考え方を生活に応用した「先入先出法」ならぬ『1つ買ったら1つ出す』ルールです

新しいシャツを1枚買ったら古いシャツを1枚手放す。

靴を1足買ったら1足処分する。

食器を1組買ったら1組減らす。

本を買ったら読み終えた本を売る、または寄贈する。

こうしたルールを決めておけば、モノの総量は増えません。

さらに買う前に、

「本当に必要か」
「同じようなものを持っていないか」
「どこに収納するのか」
「これを買うなら何を手放すのか」

と一度考えるだけで、衝動買いもかなり減ります。

これは家計管理にもつながります。定年後は現役時代より収入が減るケースが一般的ですから、「安いから買う」ではなく「必要だから買う」という習慣は、シンプルライフだけでなく資産寿命を延ばすうえでも有効です。

たとえばセールで5,000円のジャケットを見つけたとき、「安いから買おう」ではなく、「これを買ったら今持っているどのジャケットを手放すか」と考える。答えが出なければ、実は必要ではないのかもしれません。

モノが少なくなると、残ったモノを大切にするようになる

ダウンサイジングには、もう一つ大きなメリットがあります。

それは、自分が本当に好きなものが分かるようになることです。

50個の食器が棚に並んでいると、一つひとつを意識することはほとんどありません。しかし10個に減らしてお気に入りだけを残すと、その器を自然と大切に使うようになります。

洋服も同じです。

大量に持っていても、実際によく着ている服は一部ではないでしょうか。気に入ったものだけ残せば、毎朝「何を着よう」と迷う時間も減ります。

シンプルライフとは、何も持たない生活ではありません。

自分にとって価値のあるものを、必要なだけ持つ生活です。

これは仕事にも似ています。限られた経営資源を何に配分するかによって企業の成果が変わるように、人生でも時間、お金、空間を何に使うかによって生活の満足度は変わります。

モノを減らすことは、単なる片づけではなく、「これから何を大切にして生きるのか」を考える作業でもあるのです。

たとえば旅行先で買った思い出のマグカップが10個あるなら、本当に思い出深い2個だけを残す。その2個を毎朝使えば、棚の奥に10個並べておくより、むしろ思い出を大切にできるのではないでしょうか。

60代のダウンサイジングは「一気にやらない」のが成功のコツ

長年暮らしてきた家を一度に片づけようとすると、途中で疲れてしまいます。

おすすめは、小さな場所から始めることです。

最初は財布の中、机の引き出し一段、本棚一段でも構いません。

判断に迷ったものは無理に捨てず、「保留箱」を一つだけ作ります。そして半年後や1年後にもう一度確認します。その間一度も使わなかったなら、手放せる可能性は高くなります。

また、

「今日は本を10冊」
「今週は洋服」
「今月は物置」

というように範囲を限定すると続けやすくなります。

特に写真、手紙、子どもの作品、形見など思い出のあるものから始めるのはおすすめしません。判断が難しく、作業が止まりやすいからです。まずは賞味期限の切れた食品、古い書類、使っていない日用品など、判断しやすいものから始めましょう。

たとえば「毎週日曜日の午前中に30分だけ」と決め、引き出し一つを整理する。それでも1年間続ければ50か所以上を見直すことができます。

まとめ:モノを減らすことは、これからの人生を軽くすること

60代からのダウンサイジングは、単なる断捨離ではありません。

これまでの人生で増えてきたモノを一度見直し、

「これからも使うもの」
「大切にしたいもの」
「次の人に使ってもらうもの」
「役割を終えたもの」

に整理していく作業です。

できれば、健康で体力と判断力があるうちに始めたいものです。その意味でも、仕事や子育てが一区切りするリタイア前後は絶好のタイミングでしょう。

そして捨てる前に、一度「これは誰かにとって価値があるのではないか」と考えてみてください。国内のフリマやネットオークションだけでなく、品物によっては海外にも新しい持ち主がいるかもしれません。

一方で、減らすだけでは十分ではありません。

新しく1つ買ったら1つ手放す。必要なものだけを買う。これを習慣にすれば、モノは再び増えにくくなります。

不思議なことに、モノが減ると生活が貧しくなるのではなく、残したモノを以前より大切にするようになります。

60代から目指したいのは、「何もない暮らし」ではありません。

好きなもの、必要なもの、大切なものだけに囲まれたシンプルライフです。

家の中に余白が生まれれば、心にも時間にも余白が生まれます。

これからの人生に必要なのは、たくさん所有することよりも、身軽に動けることなのかもしれません。

まずは今日、引き出し一段から始めてみてはいかがでしょうか。

当メディア管理人
じょう

日系企業から外資系CFOまでキャリアアップを経験し、定年後は「定年ぼっち起業」を実践中。キャリア・お金・ライフプランに関する豊富な経験と、中小企業診断士・FP・キャリアコンサルタントなどの資格を活かし、現役世代からシニア世代までのライフ・バリュー・アップを支援。
本ブログ「キャリ道」では人生の転機に役立つヒントを発信しています。

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